何が起こっているのでしょうか
ソロモンの王国は確立され、宮殿も完成し、神殿も建てられ、そこに神の臨在が下りました(列王記Ⅰ 9:3)。しかしソロモンは危うい状態にあります。神から与えられた知恵を、誤って用いているのです。神は、賜物の誤用を続けるならイスラエルは滅びに至ると警告されます(列王記Ⅰ 9:6〜7)。
すでに亀裂が生じ始めています。ツロの王ヒラムは、四トンを超える金を提供してソロモンの神殿建設を支えました。ところが、彼は不満を抱きます(列王記Ⅰ 9:14)。ソロモンは自分が力を得るうえで助けとなったヒラムに二十の町を与えるのですが、ヒラムはその地方を「カブル」と呼びました。これは「価値がない」という言葉をもじった名前です(列王記Ⅰ 9:13)。
さらにソロモンは、イスラエルが初めて約束の地に入ったときの失敗を繰り返します(士師記 1:28)。神の敵を追い出す代わりに、エジプトのファラオの娘と結婚し、自分の民を奴隷として使うのです(列王記Ⅰ 9:15、20〜21)。皮肉なことに、神の命令に従っているのはソロモンのエジプト人の義父である王のほうで、本物のエジプトのファラオよりも、ソロモンのほうがイスラエルが逃れ出たあのファラオに似て見えてしまいます(列王記Ⅰ 9:16)。ソロモンは、かつてイスラエルが強制労働で建てさせられたのと同じような「倉庫の町」まで建て(列王記Ⅰ 9:19、出エジプト記 1:11)、エジプトから馬や戦車を輸入します(列王記Ⅰ 10:28)。
これは単に気になる符合というだけではありません。申命記で神は、イスラエルの王がエジプトの馬を手に入れることをはっきりと禁じておられました(申命記 17:16)。イスラエルは、銀や金を蓄えることも含め、あの古い帝国にまつわるものと一切関わりを持ってはならなかったのです。ここにも、ソロモンの従順に走った亀裂が見えます(申命記 17:17、列王記Ⅰ 10:21)。
ソロモンは、神から与えられた知恵を使って、神の命令を破っています。しかし同時に神は、そのソロモンの知恵を用いて周囲の国々を祝福してもおられるのです。シェバから訪れた女王は、ソロモンの知恵と富に息をのみます(列王記Ⅰ 10:5)。注目すべきなのは、この異国の女王がその結果として神を賛美していることです(列王記Ⅰ 10:8)。ソロモンの愚かさがますます明らかになっていく中でも、この女王は肉のうちに現れた神の知恵を目にして、信仰へと導かれたのです。
福音はどこにあるのでしょうか
聖書の中に、イエス以外に完全な人物はひとりもいません。それでもソロモンは、ここまでのところ、エデンの園で失われたものの回復にイスラエルが最も近づいた姿を表しています。しかし、ソロモンが願い求めた知恵——「善悪を知る」知恵(列王記Ⅰ 3:9)——が、アダムが「善悪の知識」の木の実に手を伸ばしたときと同じ結末をたどると気づくとき、胸がつぶれる思いがします(創世記 3:5)。アダムの罪は世界を壊し、アダムの子らはイスラエルを奴隷とした圧政的な帝国を築きました。ソロモンは園を回復しているのではなく、善悪を知ることに伴う呪いを、もう一度演じ直しているのです。神の知恵を誤用し、従うことを拒み、イスラエルを死へと導いています。
けれども、イエスはソロモンよりも優れた王です。イエスご自身がそう語っておられます(ルカの福音書 11:31)。さらにイエスは、ご自分が再び来られるとき、私たちは皆シェバの女王に会うことになり、彼女がイエスの王としての知恵を認めない人々をさばくと言われました。女王がソロモンの欠けのある知恵と富を見て神を賛美したように、私たちもイエスの完全な知恵を見て神を賛美したいものです。イエスの知恵は、富や政治的な同盟や馬によって証明されたのではありません。むしろイエスの知恵は、その弱さのうちに示されました(コリント人への手紙Ⅰ 1:25)。弱さこそが、知恵にまさる力を持っているからです。確かにソロモンの知恵は王国をもたらしましたが、イエスの弱さは死者の中からの復活をもたらしたのです。
シェバの女王のように、私たちもイエスの十字架を見つめ、ソロモンの王座にまさる知恵の壮大な光景を見ることができます(コリント人への手紙Ⅰ 1:23〜24)。そしてシェバの女王のように、この知恵のゆえに神を賛美するなら、私たちは死者の中からよみがえらされ、終わることのない御国に入れられます。イエスの御国は奴隷たちの背中の上に築かれたのではなく、イエスご自身の背に受けた傷によって築かれました。イエスにおいて、アダムが始め、ソロモンには取り消せなかった呪いが、ついに覆されるのです。
ご自分の目で確かめてみましょう
聖霊が、知恵に満ちた神を見る目を開いてくださいますように。そして、イエスこそ肉のうちに現れた知恵であると見て、その御国の富を味わうことができますように。

